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(競争的資金)
課題名:「乳幼児の母親が持つディストレス-日本と中国の共通性と差異-」 |
単独 |
2012年度 |
日本学術振興会 |
石 晓玲 (研究代表者)
平成24年度科学研究費補助金「研究成果公開促進費」(課題番号:245203)
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2 |
課題名:「虐待予防に向けた「子どものネガティブな感情表出を受け止める養育力」強化方法の解明」 |
単独 |
2014~2016年度 |
日本学術振興会 |
石 晓玲 (研究代表者)
科学研究費助成事業基金助成金H26~28年度「基盤研究C」(課題番号:26380898)
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3 |
課題名:「子どもの負の側面を受容する力を高める親支援プログラムの開発:虐待予防の効果検証」 |
共同 |
2018~2021年度 |
日本学術振興会 |
石 晓玲 (研究代表者)
科学研究費助成事業基金助成金H30~L4年度「基盤研究C」(課題番号:18K03073)
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私は「健全な教育・発達をいかにして保障できるか」という問いを抱き、20年前に、化学から教育心理学専攻臨床発達心理学領域に転身しました。そして研究は実践に基づくべき、還元すべきだと考え、科学者―実践者モデル(Scientist-Practitioner Model)を念頭に、一貫して子育て支援の研究に、取り組んできました。
修士課程の時から地域の親子教室・保健所に通い、また「関西生命線」(いのちの電話、9年間)での留学生支援・外国人子育て支援ボランティア活動および日本の精神科病院での実習経験を積み、さらに児童養護施設で心理士として4年間子どもの心理的支援を行いました。
これらの実践に基づき、博士論文では乳幼児を抱える母親の心身の健康に影響する要因の包括的発達モデルを構築し、3つのアプローチ(ジェンダー、ソーシャル・サポート、文化的自己観)から一連の日中比較の実証研究を行い、日本と中国の育児支援について具体的な提案を見出しました。その成果は、研究成果公開促進費の助成金を受け(課題番号245203)、出版に至りました。
詳しい内容は、本著を参照していただければと思います。
https://www.kazamashobo.co.jp/products/detail.php?product_id=1192&msclkid=1fb55ef6ac3411ec9fe70e9870d2e84a
上記の研究を発展させた、『虐待予防に向けた「子どものネガティブな感情表出を受け止める養育力」強化方法の解明」』(科学研究費助成事業基金助成金H26~28年度「基盤研究C」、課題番号26380898)という研究では、一般家庭における虐待予防の課題に真正面から取り組みました。
本研究はインタビュー調査と質問紙調査の混合法による3年間の体系的な研究でした。児童虐待予防の鍵は、「子どものネガティブな感情表出を受け止める養育力」を高めることだと捉え、インタビュー調査を基に養育力の尺度を開発し、「怒りによる統制」、「感情の混乱」、「回避・統制不能」、「配慮・説明」という4因子を見出しました。4つの下位尺度の定義と代表項目は次の通りです。
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「配慮・説明」
子どものネガティブな感情表出に対して,子どもの気持ちに配慮し,適切な工夫をしたり,説明をしたりして子どもを受容・保護する傾向。
例:子どもの自主性を重んじながら、何かがいけないのか話す
「怒りによる統制」
親が怒りを表出し,子どもの行動を統制しようとする傾向。
例:子どもがダダをこねる時、怒鳴ってやめさせる
「感情の混乱」
親として子どもに向き合えないほど親自身の感情制御が困難な傾向。
例:親も子どもと同じように、感情をコントロールできなくなる
「対処不能・回避」
対処できなくなったり,親子間の衝突を避けるよう問題回避したりする傾向。
例:やめてほしくても、子どもが泣くのでやらせてしまう
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続いて一連の質問紙調査より、虐待行為傾向を高める従来のリスク要因である育児不安や精神的健康よりも、養育力の寄与が強いことが確認された。そして養育力と、母親の子どもと遊ぶ力、自己やしつけへの認知、対人関係、子どもの社会性の発達との関連を踏まえて親の養育力を高める方法を提案しました。
これらの成果は1つの査読論文とシンポジウムを含めた8つの学会発表にて報告しました。それらの内容については、本ホームページの「関連文献」欄を参照していただければ幸いです。
これまでの基礎研究で得られた成果を社会実装につなげるため、次に、「子どもの負の側面を受容する力を高める親支援プログラムの開発:虐待予防の効果検証」(科学研究費助成事業基金助成金H30~L4年度「基盤研究C」、課題番号:18K03073)という課題研究を推し進めました。
本研究においては、さらにインタビュー調査と質問紙調査より、「子どものネガティブな感情表出を受け止める養育力」と、完璧主義や本研究の協力者である藤村和久先生が開発した保育者(養育者)特性(NTI)との関連を検討したのち、これまでの基礎研究をまとめ、児童虐待予防につながるメカニズムを検討しました。
そして、これまでの研究成果に基づいた独自のSHCペアレントトレーニング・プログラムを開発し、介入研究を実施しました。このホームページでは、このSHCペアレントトレーニング・プログラムを紹介し、専門家や支援者だけでなく、一般家庭の親にも広く知っていただき、ともに考え・学び機会になればと思います。また、すこしでも子育ての役に立つことを願っています。